――― 向こうに住んでいらっしゃる時から?
マーティ「そうそう。車に乗ってる時もずーっと聴いてて。なのにアメリカに住んでるのアホじゃん。日本なら邦楽聴き放題だし、やり放題だし、当たり前のように、日本に住むしかないじゃん!って。日本語が趣味だったからある程度喋れたし、なんとかなるんじゃない?と思って日本に来たんですよ」
大介「すごいなぁ(驚愕)。僕は逆に、洋楽しか聴いてなかったんです」
マーティ「そのほうが不思議ですよ。Aqua Timezには洋楽の味ゼロだよね〜、いい意味で! ヘヴィメタルの要素があるのにこの音楽が生まれるって、やっぱりどこかに邦楽の影響が入ってるんじゃないですか?」
大介「僕らが10代の頃って必死に洋楽を聴いてたけど、ビーイング系や小室サウンド、'90年代J-POPが勝手に耳に入ってきて。どれも完成された音楽だし、いいメロディだから、無意識に口ずさんでいたんですよね」
マーティ「そうそうそう、まったく同じ。その理由で日本に来たんですから」
大介「だから8割はメガデス、2割はB'zやWANDSも聴いて、みたいな(照)。そうすると、日本のバンドとしてアウトプットしようとした時に、その2割のルーツが強烈に前へ出てくるんですよ」
マーティ「ふぅぅん。曲にもっとヘヴィなニュアンスを入れようとは思いませんか?」
大介「たまに入れるんだけど、シングルではなかなかやらせてもらえないですよねぇ」
マーティ「ハハハハ。それは超わかる! だから別の角度で入れてるんだよね。対談前に聴かせてもらった配信3部作、超気に入ってるんです。"シンガロング"っていう曲が特に好きで。決してヘヴィメタルのリフじゃないんだけど、ヘヴィメタルの魂が伝わってくるというか。"ジャンジャンジャンジャン"って強めに刻んだ8ビートからパワーを出しつつ、同時にメロディをしっかり支えていて。だからこう、Aqua Timezがいきなりゴリゴリのリフとかキンキンのソロを入れたら、何コレ?!って引いちゃうかもしんないけども、知らないうちにポップファンがメタルを聴いてるっていう感じで面白かった」
大介「あぁ、確かに。"シングロング"のAメロのギターはもう、レコーディングでも完全に頭を振りまくって弾いてましたよね」
マーティ「ライヴの時も飛びまくってるんじゃないの?っていう音だったもん」
マーティ「それも邦楽が大好きな理由のひとつですよ。ポップでも、ロックと同じくらいのエネルギーを、いや、むしろより強いパワーが出せるじゃないですか。洋楽のポップは全然違う。R&Bやラップ、もしくはカントリーの要素が強くって、そんなに元気が出る音楽と思わない。もちろんいい曲はいっぱいあるけど、日本のポップミュージックとは勝負にならないと思いますね」
大介「なるほど。最近はアイドルの方とも一緒にやられてますよね?」
マーティ「それも同じ理由ですね。アイドルの音楽とJ-POPは解釈が違うだけで、内容は似てると思いますよ。ギタリストとして深く分析すると、コード進行とメロディのセンスはどれも歌謡曲ベース。それをギターサウンドに変換させて、ヴォーカルと歌詞でアイデンティティーが生まれている。だから"シンガロング"もメロディだけを取って別の歌詞を乗せて女の子に歌わせたら、素敵なアイドルの曲に属すると思う」
マーティ「言い換えれば、日本では若い頃から大人のコードを使ってるんですよ。だって10代のアマチュアバンドでも、マイナーセブンスとか普通に出てくるし。けど向こうでは30歳過ぎないと無理なんだよね。ロックの解釈ではそういうコードは必要ないって理由で、ロック系のポップにもないんだよ」
大介「俺もメタルあがりだからわかります。最初はパワーコード以外弾けなかったし、弦なんて2本鳴らしゃあいいんだくらいに思ってたし。それが20歳過ぎた頃に、あっ、マイナーセンブンスってあるんだ!って」
マーティ「(笑)。あと日本の曲はメロディが長いね。サビも最初から最後まで複雑に展開していくけど、洋楽は意外と4小節の繰り返しのサビが多いから」
大介「でまた、僕たちの曲が長いんですよ。シングルはほとんど5分以上あるし」
マーティ「Aqua Timezの音楽には贅肉がないから大丈夫。しかも終わりに向けてちゃんとクライマックスになるじゃん。"シンガロング"も、ラスサビでヴォーカルがひとりになるでしょ? あれが気持ちいいのよ。もし3分の曲だったらあの効果は半減じゃないですか。あそこまでビルドアップしてくれると、キター!って嬉しくなるから」
大介「そう言っていただけると、苦労の甲斐が(喜)。ウチらは毎回、どれだけ短くできるかの闘いなんですよね。ヴォーカルが歌詞とメロディを作るんで、伝えたい想いがいっぱいあるから、ものすごい分数になるんです。それを他のメンバーで、いかに飽きさせずに聴かせるか考えるっていう。例え渾身のギターソロを弾いたとしても、全カットとかね」
マーティ「あぁ。いいバンドアレンジだと思います。聴きながらいつも、全部必要だなって思うから。意味がない間奏とか、意味ないキメとか、まったくないもんね。」
大介「ありがとうございます。ちょっとギターに関するお話を聞いてもいいですか?」
大介「昔から思ってたんですけど、マーティさんのギターソロは他のギタリストと全然違っていて、オリエンタルな空気を感じるんですよね。今日お話をうかがって、聴いてきた音楽の蓄積が、言葉では表現し難い和の心みたいなものを生み出していたんだなぁって」
マーティ「うん。僕はティーンエイジャーの頃、既にけっこういいギタリストだったの。で、僕よりうまいやつはみんなジェフ・ベックとかヴァン・ヘイレンの方向に走ってて、でも僕は同じ道に行きたくなくって、ちょうどそのタイミングで演歌を発見しました」